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宮田 速雄氏 (高知新聞社編集局次長兼報道本部長)

 運動、食事、ゆったりとした時間、地域のつながり
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●フンザでの健康長寿
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 10年ほど前、『高知新聞』で「老いを考える」というテーマで長期連載をやりました。1990年だったと思うんですが、高知医大の老年病科の松林さんという先生がパキスタンへ行くというので一緒に連れて行ってもらいました。なぜそこへ行ったかと申しますと、世界には長寿地区と言われるところがあるんですが、3大長寿地区というのがあり、一つは旧ソ連のコーカサスですね。それから南米ペルーだったかな、ビルカバンバというところがありました。もう1カ所がパキスタンのフンザ地区、何か桃源郷というふうに言われているところです。そこが本当に長寿なのかどうなのか調べに行くのだということで行きました。この老年病科というのは、もともと香美郡の香北町で健康長寿計画で住民の方を長い間検診しながら、どうすれば健康な形で長生きできるのかということの研究をずっとやっていました。その延長線上にある研究として、フンザ地区に行こうとなったわけですね。

 フンザといいますとパキスタンでも北のほうでして、ほとんどヒマラヤ山脈の西の端のカラコラムという非常に山岳地帯なんですが、一つ峠を越えれば今戦争をやっていますアフガニスタン。カラコラムハイウェーというのを抜けると中国へ行くというそういうところで、大体標高が2500から3000メートルぐらい。そういうところに村が点在している。そこへ行って住民の方を血液検査したりいろんなテストをしたり、もちろん医療活動もやりましたけれども、1カ月ぐらい何百人もの方を調べさせていただきました。

 長寿なのかどうか。結論から言いますと分からないんです。戸籍がないから年齢を聞いても、ほとんどろくな年齢を言わない。ただずっと調べてやってみますと、確かに100歳以上の方が何人もいた。それはこういう出来事があった年に生まれたから、自分はこれぐらいだろうという言い方をするんですが、確かに高齢の方がおられ、しかも非常に印象的だったのは、その高齢の方が非常に元気であった。腰の曲がった人をほとんど見なかった。皆無でしたね。全然腰の曲がった方がおられない。それからいろんなテストといいますか検診をしたんですけれど、例えばボタン掛けテストって、ボタンをずらっと並べて指先の器用さというかそれを調べたり、それからアップ・アンド・ゴーと言っていすに座って立ち上がり歩いて帰ってくる、その時間を測ったりとか。これ香北地方でもやっていたんですが、それと同じテストをやってみると、非常にこのフンザの老人の方というのは数値が高い。極めて健康な方が非常に多いということが分かったんです。こういうのを見てみますと長寿かどうかはともかくとして、非常に元気な高齢者が多いのは間違いない。

 どうしてそういうことになったのかという研究をずっとやってきたんですが、結論としてはなかなかはっきりしたことは分からないんですが、推定になるんですけれども、一つはやはり動いていることだろう。日常的な運動であろう。別にストレッチ体操をしているわけじゃないんですが、そこは非常に標高の高い、2500と言ったんですけど、そういう所で坂道が非常に多い。農業をやっているんですが、アップダウンがあるんですね。それを毎日歩きながら農作業をしている。日常的に結果として運動をずっとされている。それが非常にプラスに作用しているだろう。それから食べ物はあまりいい食べ物はないんですが、アプリコットというあんずですね。これは非常にカリウムの多い果物を取られている。水がこれは氷河の水が溶けてきているんですが、どうもミネラル質が高いんではないか、あるいはイスラム教ですから非常に規則正しい生活をしている。そういったことが総合的に作用して健康な方を生んでいるではないか。

 もう一つ言えるのは、時間に対する感覚というのがゆったりしていると言いますか、われわれは1年刻みとかあるいは1分刻みでやるんですが、ここの方に年齢を聞いて面白かったのは、75だとか50だとか65だとか常に5歳刻みで年齢を言うんですね。年齢を聞くとほとんど。最初のうちこんなものかなと思っていたんですが、あまりにも多くの人が5歳刻みで年齢を言うからそれで途中で気が付いたんですけれども、時間というのも大体5年ぐらいで区切って考えているんではないか。われわれは大体1年単位で言うんですけれど、物理的な絶対的な時間は1年というのがあるにしても、ここの方は大体5年ぐらいの単位で物事を考える習癖と言いますか癖があるんじゃないかと。それだけゆったり考えている。そういう意味でストレスを持っていないと言いますか、そういうものがない。ただ女性はちょっと仕事が、ここは男性天国でして女性が働いて男性はずっと遊んでいるんですけれども、女性がどっちかというと老けている感じでしたね。


●どうして沖縄が長寿なのか?
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 帰ってきまして、翌年でしたか、長寿と言えば沖縄ですね。今は長野県が男性はトップになったんですけれど、当時はずっと沖縄が男女ともトップをいっておりました。どうして沖縄が長寿なのかということで今度私1人で沖縄へ行きましていろんな方に話を聞きました。ちょっと北のほうなんですけれども大宜味村というところがある。金城ナベさんという非常に高齢の方が元気に芭蕉布を編んでいるという。大宜味診療所という村の診療所があるんですが、そこで東先生という診療所の先生にお話をいろいろお伺いしました。東先生が言うには、沖縄の長寿というのは、一つは確かに動いていること。それから食べ物だろうと言うんですね。

 それと面白いと言いますか、1人暮らしが非常に体にいいんだと。同居は老化への第1歩である。基本的に1人暮らしというのが健康の第一なんだ。つまり家族が増えると全部仕事を取ってしまうんですね。1人でいると、どうしても自分でやらなきゃいけない。だから体を使う。ただ大宜味村の1人暮らしというのは独居じゃないんですね。決して孤独ということではなくて、1人暮らしだけれども非常に近所との付き合いが広い、日常的に。私も取材に1人暮らしの方のところへ行ったんですけれども、頻繁に近所の方が来る。こちらからも行く。沖縄はユイマールという言葉、ユイですね。そういう地域社会というのが完全に残っていまして、地域としていろんな人と一緒に生活しているという形がある。それが健康につながっているんではないか。

 それからもう1点。やはり食事ということで言いますと、戦後まもなく大体イモが中心だった。おイモが主食だった。サツマイモというのは食べるとぼそぼそして、どうしてもそれだけではおいしくない。それで結局おかずをたくさん食べる。しかも食塩がそんなに要らない、ご飯じゃないから。当時厚生労働省が12グラムぐらいだったですかね。日本人の摂取量の最高値を10グラムですか、10グラム以下にしたいと。当時全国平均が12グラムちょっとあったんですかね。それが沖縄は8グラムぐらいだと。非常に食塩の摂取量が少ない。逆にあそこは1年中豊富に野菜が取れますから、漬け物なんかにする必要がない。そういうことで自然と食塩の摂取量というのは少ない。
 食べ物によって医食同源と言うんですか。食べ物が体を作っていくんだ、病気を治していくんだという考え方、中国と近いですからそういう考え方が入っている。ご飯を食べた後、普通われわれはごちそうさまとか言うんですが、向こうは「クスイナイビタン」と言うんですね。「クスイナイビタン」というのはどういうことかと言いますと、薬になりましたと言うんですね。沖縄の言葉で「クスイナイビタン」、これをご飯を食べた後言う。そこに明らかに医食同源というようなものが浸透している。
 豚肉は有名なんですけれども、必ず脂肪分を落とした上で食べる。コンブは非常に摂取量が多く確か日本一だったと思うんですが、コンブかニガウリですね。最近ニガウリもどんどん高知へも入ってきていますけれども、そういった緑黄野菜。非常に豊富なバランスでいろんなものを食べているというのが健康長寿につながったんではないかと。

 私が行ったのはもう8年ぐらい前なんですが、その時琉球大学の先生が、沖縄の日本一はまもなく終わると思いますよとおっしゃっていました。ファストフードが入ってきて、今の若い人たちなんかも全然伝統的な沖縄料理に見向きもしなくなってきている。やがて沖縄の日本一はなくなると思いますと。翌々年ぐらいに、男性のほうは確かにナンバーワンから落ちてしまいました。
 パキスタンにしろ沖縄にしろ、やはり健康の基本というのは運動と食事だろうと思いながら、私はそういうことができないわが身を恨んでいるところでございます。

(ミレニアム ヘルス フォーラム 第5回シンポジウムより 文責:事務局)

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